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vol.13 旅のはじまりはいつもガソリンスタンドだった

vol.13  旅のはじまりはいつもガソリンスタンドだった

 

真夜中のむっとしたガソリンスタンドの匂いと周囲の闇夜とスタンドの明るさのコントラストで、わたしは幼き頃の家族旅行の記憶が呼び起こされる。


私は車での移動が好きだ。

ある尊敬する人が酒に酔った勢いで言った「想像力(創造力)は移動距離に比例する」という言葉が私の心には深く刻まれているのだが、その言葉の指す「移動」は、私においては車移動が当てはまる。ほんの少しだけ日常から浮遊しつつも目的地まで地続きであるその感覚が、移動距離を身体的に体感できるからだ。


それはきっと、私の家族が車での旅行が好きで、その経験が私の想像力に大きく影響してきたからだろう。国内の家族旅行で(物理的に無理な立地を除いて)電車で旅行に行った記憶は殆どなく、どんな遠方だろうと、トランクに沢山の荷物を積込んだ車で向かうのが家族の常識だった。


そんな車での家族旅行に於いて、慌てるのが嫌いで且つ計画好きな両親には旅行前夜の決まった分担があった。それは、家族総出でのパッキングをあらかた終えると、母がそのまとめをしている間に父がガソリンスタンドに給油をしにいくというものだった。そして兄は母の手伝いをし、私は父と一緒に車に乗りガソリンスタンドに行くのが常だった。


育ち盛りの少年ふたりをいなしながらのパッキングがスムーズに進むわけがなく、ガソリンスタンドに行くのはいつも真夜中になっていた。普段の就寝時間をとうに過ぎた時間でも旅行に行く興奮で目の冴えた私は、父が給油している姿を横目に眺めつつ、ドアポケットに入ったマップルを開き、教えてもらった旅先への道順を地図上で指でなぞり、その風景を想像する時間が大好きだった。


真夜中のガソリンスタンドが、私にとってかつて家族旅行で訪れた様々な土地すべてのスタート地点だった。あの頃嗅いだガソリンの匂いは、その匂いの得体の知れなさと、まだ見ぬ土地への期待感が相まり、嗅ぐだけ無償にワクワクさせられた。


大人になり、子供ができ、あの頃の父と同じように真夜中のガソリンスタンドで給油をするようになった今、あの頃のような高揚感は薄れてしまったが、それでも給油ノズルが戻るのを待ちながらぼうっと後部座席を覗きつつその匂いを嗅いでいると、ワクワクしながらマップルを開くかつての自分の姿が思い出され、なんだかノスタルジックな気分になる。


時は移ろい、ガソリンスタンドに行く頻度は大幅に減り、マップルを開くこともなくなった。果たして自分の子供には、どんな匂いと家族旅行の思い出が結びつくのだろうか、今のところ全く想像はできない。


いつか誰かの大切な家族旅行の思い出の一片となれたら、そんなことを願いつつ作った新商品がもうすぐ完成します。Vintryの香りとともに、みんなも旅に出よう。

 

Writer Makoto Kobayashi