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Vintry Multi Balm N°3 & N°4 November 15 New release now

Vol.04 「あ」「い」「こ」を行き来する香り

 

ひらがなの50音順を眺めていると、ちょっとした発見がある。

「あ」と「い」は隣同士。だから「愛はすぐそばにある」なんて、うまいことを言う人がいる。たしかに綺麗だ。

でも私は最近、「こ」と「い」の距離のほうが気になっている。恋は、ほんの少し離れている。すごく離れているわけではなく、この“ほんの少し”が、たぶん大事だ。


触れられそうで触れられない、その余白を埋めたい思いが恋だとすると、恋そのものを距離が成り立たせている。


一方、近くてあたたかくて安心できる愛は、近すぎてしまうと存在が空気みたいになってしまう。刺激がなくなって、時に感謝も忘れてしまうような。


これは匂いとよく似ている。


ヒノキ風呂を自宅に作って毎日入っていると、最初は感動するくらい香るのに、1ヶ月もすると香りがなくなるらしい。なんと、鼻が慣れてしまうということだった。

友達の家の匂いは一瞬でわかるのに、その家の人は気づかない、みたいな。

近くにあるものは時に背景になるのかなぁと思う。


さて、ここで問題が発生する。

私たちは香りを扱っている。


もし毎日同じ香りを使って、慣れてしまったら?

仮に恋として出会ったVintryが、いつのまにか空気みたいな存在になったら?

それはちょっと寂しい。しかしだからといって、

ずっと刺激的で強烈であり続ける必要もないと思っている。

毎日ジェットコースターだと普通に疲れる。

目指しているのは、恋だけでもなく、愛だけでもない状態。安心して毎日使える。

ときどき「あ、今日ちょっといいな」と思える。

そんな香りを選べること。

気温や体調で表情が変わったり、わずかな揺らぎがあること。完全に慣れきる前に、小さな変化がそっと差し込んで、愛のなかに恋の距離を残し、恋のなかに愛の安心を置くような。

「あ」と「い」と「こ」のあいだを、行ったり来たりできるあいこな関係。


Vintryは、そういうブランドでいたい。

香りを強くし続けるのではなく、香りとの関係を動かし続ける。

毎日がとっておきの日常で、それでいてほんの少しだけ非日常になるような、恋と愛が引き分けになるくらいが、ちょうど良い気がしている。

 

Writer Yuto Handa